症例5頻尿=尿しぶり

 

治療の経過

初診時は鍼治療の説明をしました。身体所見としては慢性の腰痛があります。虫垂炎の痕は綺麗で、これが影響しているとは思えません。腰部腰筋の緊張があります。鼡径靱帯と腹斜筋、腹直筋、そして小腰筋の停止部の恥骨周辺に痛みや不快感を訴えます。

高校時代に短距離の選手で股関節を故障し、その後腰痛になったと言います。慢性腰痛では膀胱直腸障害を呈することもあるので、関連も考慮しました。

腹部には異常な緊張があります。医療機関で色々な検査をしても異常が認められないため、原因不明としか言いようがありません。しかし、おぼれる藁になるようなことだけはしたくありません。きっと何かあるはずです。そう信じて治療を始めました。

まず腰痛の改善からスタートしました。かなりひどい腰痛ではないかな?と思えるほど腰がそっています。仰向けに寝て、腰部は布団につかないでしょう。身長170センチで体重が54キロは痩せすぎです。長年の愁訴もストレスとなっていたかもしれません。腰痛もだいぶ良くなり、腰のそりも改善し、調子は少し良くなっていきました。

しかし、好不調の波が激しいようです。何故でしょう?

 
患者さんのイラストとメール
メール添付されたイラスト。赤色で示された部分に不快感がある。
治療継続中メールでの相談

やはり左側陰毛の生え際あたりと下腹部とももの境界線にそった部分に尿意のもとを

感じます。ただ調子が悪くなって感じたことは、

さらに尿意のかんじるとこがあるといったところです。

刺激は左陰のうの付け根と陰茎のこれもまた左側に走っていき、

亀頭のあたりでちょっとしたうずきが生じて、尿意そのものがなんとなく射精のような

(とはいっても根本的に尿意なのですが)感覚なのです。

以上の部分の刺激が多いか少ないかで調子のよしあしがきまります。

つたない表現ばかりでどうかと思いましたのでへたくそながらも図示したものを添付

しました。

 
治療

5回の治療の経過、以前より愁訴は少なくなっています。調子が良い悪いもあるが、だいぶ気にならなくなってきたようです。治療を続けると愁訴の部位がはっきりしてきました。前述のメールの通りです。こういったことは、メールのほうが話やすいですね。本当に率直な表現と図版の添付。何とかしてくれという気持からでしょう。これには私も奮起せざるをえません。治療中に気になっていた場所=精巣挙筋の影響ではないか?と確信しました。それまでの治療は大腰筋と小腰筋、腹直筋・腹斜筋をステンレス鍼(ディスポーザブル 直径0.2ミリ 0.18ミリ 長さ5センチ)を使用していました。腹部の緊張はかなり緩和していました。残るのは図版の部位なのです。

精巣挙筋の治療には鍼にもっと細いものも加え、かなり繊細な治療に集中することにしました。

結果(こういった症例の報告を3たといって、診た・治療した・治ったと、単純な報告の代表ですが、これは仕方がありません。画像の添付と具体的な図示もなかったら、これはいけません)。著しい効果が現れました。治療目標をしぼり4回治療しましたが、愁訴は本当に気にならないレベルになったといいます。良かったですねー。

精巣挙筋の作用ですが、ここは射精時に微妙に働くのです。男性の尿道は尿だけではなく、射精時の大切な通り道です。話しにくいところですし、性とも関連しているのですが、だからこそ大切だと言えます。精巣挙筋による尿意との関連はなかなか難しいところですが、私も偶然にも10年ほど前に一度酷い経験をしています。右鼡径靱帯と周囲が腫れあがり、嵌頓ヘルニア(ヘルニア脱腸=ヘルニア内容である腹部臓器がヘルニア門で絞扼されて腹腔内に非還納性となるとともに,この脱出臓器の血行も阻害されて壊死に陥る危険を伴う)では?と間違われたことがあります。このときの尿しぶりも大変でした。かなり窮屈なズボンをはいて長時間の運転(それもマニュアル車)で発症したと記憶しています。

治療で注意しなくてはならないのは、消毒は勿論ですが、治療部位をきちんと押さえることです。筋の起始停止部にきちんと鍼が当たれば、無痛です。上記のケースに対する鍼灸師のアプローチは、鍼の響きはもちろん、触診で筋の走行をきちんと把握できること。さらに鍼の刺入イメージが出来てから臨床で取り入れて下さい。恥骨周辺は立体的な捉え方をして下さい。

患者さんに対してです。このような部位の治療ですので、恥ずかしいと思いますが、これは一時だと思います。治療ですから。

患者さんと共に歩む臨床をスローガンにしていますが、今回は本当に良い例となりました。OKさん、よく信頼し、ついてきてくれましたね。

 

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